第二回  正解

ドイツのシクでした。


ランボルギーニは、かつて我が国で過熱したスーパーカーブームの象徴なだけでなく、小スケールミニカーにおけるスーパー・スポーツカーのシンボルでもあります。実際、ラ社は何度も身売りしなければならなかったほど販売台数が少ないのですが、いったいこれまで、どれだけ多くの小スケールブランドが、ミウラを、カウンタックを、そしてディアブロをリリースしてきたのか、ミニカーの世界では実車をはるかにしのぐ人気を誇っています。

しかし、スーパー・スポーツカーの代表である以上、ミニカーのラインナップに加えられる車種と言えば、当然ラ社のトップモデルばかりです。60年代のマルツァルという奇跡的例外こそありますが、小スケールモデルとしてはイスレロも350GTも、ウラッコもジャルパもなく、シルエットとチータがかろうじてリリースされているぐらいです。そして、今回紹介するエスパーダが。

とあるサイトでの研究活動により、シクのエスパーダは「希少車」であることが検証されています。希少車の詳細についてはいずれコラムにも書きますが、簡単に言えば、ある一つのブランドでしかリリースされていない車種のことです。エスパーダの小スケールモデルはドイツのシクにしかありません。ちなみに、おそらくチータもトミカのみの希少車であり、反対にシルエットはプレイアート以外にも存在することが判明していますので希少車ではありません。


興味深いことに、シクのエスパーダは希少車であるだけではなく、シクがこれまでリリースした唯一のランボルギーニなのです。1955年から小スケールモデルをつくりはじめ、現在も新車を出し続けているシクにたった一種類しかランボがない、しかもそれがミウラでもカウンタックでもディアブロでもなく、四シーターのエスパーダ! 非常に面白い、というより、よくぞ出してくれましたと感謝したいぐらいです。(正確には、シクはもう一つ、エスパーダのファイヤーチーフ仕様という珍品も出しています。これって実車が存在するんでしょうかねえ?)

なおSIKUは、ドイツ語の発音にもとづいて表記すればジクとなるらしいんですが、かの中島登さんの著書をはじめとする70〜80年代に発刊されたミニカー本や、古くからある専門店の店頭ではシクと言われており、ワイキキの中でもその言い方が身についてしまっているので、本サイトでは濁点のつかないシクと表記します。


思い出のシク(某名作SF風に)

20ン年前のことです。ワイキキ少年は月に一回、S県から東京都内に模試を受けに通う小学生でした。
スーパーカー少年でありながら(?)、当時乗り物酔いがひどかったワイキキにとって、電車に揺られる約一時間半は、それはとてもとても辛い時間でした。いやー、もう、電車を降りる頃には顔面蒼白、ゲロゲロゲ。
そんなワイキキ少年にとって唯一の楽しみといえば、模試の帰り、池袋のデパートでミニカーを眺めることでした。

ある日、新たにショーウインドーの中に見つけた、メタリックに輝くそのシリーズは、近所のオモチャ屋にもあるトミカやマッチボックスとはちがった、不思議な存在感に満ちあふれていました。

重厚なボディ。繊細なディテール。オモチャであって、オモチャでない。
スーパーカーとしては異端の部類に入るモデル達……ランボルギーニ・エスパーダ、アルファロメオ・モントリオール、ポルシェ914、007のムスタング・マッハ1、そしてスーパーカー大百科にはけっして載っていなかった謎のフェラーリ・ベルリネッタ。

次の月、勇気をふるってワイキキはその中の1台を買い求めました。小学生にとってトミカの二倍もする値段のものを一人で買うのはどこか罪の意識すらおぼえた、よき時代。
車体の裏を見る……SIKU, MADE IN GERMANY。

思えばあの出会いをきっかけとして、ワイキキ少年の中でミニカーが、転がして遊ぶモノから集めるモノへと変わっていったのでした……。



最初に買ったシクはなにかというと、言うまでもなく、エスパーダなのでした。そしてこのモデルは、今あるコレクションの中では、一番長く手元にあるものです。

もちろん、シクと出会う以前もトミカやマッチボックス、ホットホイール(ミニカ)は集めていましたが、あるとき、家に遊びに来た7歳の従弟に母親が、なんと、「好きな車があったら、もっていってもいいよ」と言い、なんとなんと、彼がそのまま数十台もって帰ってしまったのです。トミカの通常品ではないセット物も、HWのレッドラインもなにもかも。余談ですがその従弟は、ワイキキのミニカーがきっかけとなったのか、現在、フェラーリなど高級外車専門の整備士をやっているそうです。

そのときシクだけは、机の引き出し深くにしまっていたため、“大災厄”を逃れたのでした。たぶんシクまで、なかでもエスパーダまでがなくなっていたら、その時点でワイキキはミニカー集めをやめていたでしょう。そんなこんなで愛着のある一台なのです。



前のページで、ルパン三世に登場したエスパーダについて言及しましたが、同モデルはべつのアニメでも主人公の愛車となっていましたね。“キザな金持ちのボンボン、アーンド軟弱者”を演出するための小道具として四シーター・ランボを使ったわけですが、なかなかの慧眼だとは思いませんか? さて、その主人公は誰かというと……解答はまた別項に譲ります。


“ルパン”のメルセデスSSK(シク)



では、実際に、ワイキキ・コレクションの原点とも言うべき70年代中〜後期のモデルを中心に、シクを紹介しましょう。

“大災厄”からのがれたモデル達をどうぞ……。

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上記内容は、すべてワイキキの記憶にもとづくものであり、
事実誤認、歪曲、欠落等がありましてもご容赦ください。
あるいは、すべて創作かも知れません。