第3回  正解

ペニー(伊)の912でした。


ポルシェ912は、356と比べてかなり高価になってしまった911シリーズへの反省から、その廉価版としてリリースされたモデルです。外見的にはフォグランプの省略程度にとどまっていますが、エンジンは旧世代の356シリーズの物が流用され、インテリアは安価な素材に変わっています。また、マーケティング上からみた場合に912の後継車種はなにかというと、914がそれにあたります。このように912は、911というスパルタンなスポーツカーと同じ外見を与えられながら、まったく異なる性格を持ち合わせているものです。

しかし、「比較的安価で、気軽に乗れるスポーツカー」というポルシェ356シリーズの精神はむしろ、912のほうが受け継いでいるのではないでしょうか。比較的豊富にあるVWビートルのレストアパーツを使って、912を新車同様に日常の足とするというのも、古い車とのいいつきあい方の一つかも知れません。

とはいえ、いつの時代であっても、ミニカー化されるものと言えば、その車種のトップモデルばかりです。911と912は一応違う車種とはいえ外見上は双子も同然なので、モデル化という点では廉価版である912は割を食ってしまいました。1/43では何種類かリリースされているものの、小スケールではイタリーのペニーがモデル化しているのみとなっています。

ペニー(Penny)は60年代における伊ポリトーイ社の小スケール・ブランドです。そのモデルのいくつかは別のページで紹介しますが、自国のスポーツカーを多くリリースしており、我が国のエンスージアスト達が熱い目を向けるマニアックなモデルも少なくありません。

そんなペニーがポルシェをリリースしているというだけでもちょっと驚きなのに、なぜ廉価版である912をわざわざモデル化したのか……謎です。

ちなみに、912は、東名高速道路の高速パトロール隊に配備されたことで知られていますね。想像するに、安価なモデルを選ぶことで、外国車を購入することに異議を申し立てそうな層に対する言い訳にしたのだと思います。まあ、対費用効果という観点からすると、結果的に十分なものだったのでしょう。


1/66のナロー・ポルシェ2種
左:911カレラ(シュコー)
右:911(ベストボックス)


ペニーについて

ペニーとの出会いは、かの中島登さんによる「ミニカーコレクション」(昭和55年、二見書房刊)に掲載されていたのを見たのがはじめてでした。

ところが同書においてペニーのモデルは、数台ずつカーキャリアに乗せられた形で紹介されており、いまひとつディテールがよくわからなかったのです。以前よりワイキキは「シュコーの精緻な雰囲気でイタリー車があればなあ」と常々考えており、シュコーと同じ1/66のペニーは、まさにそれ通りのつくりだったのですが、まったく気がつきませんでした。

はじめてペニーの実物に出会ったのは、ちょうど60年代のヒストリックカーの魅力にとらわれだした頃でした。「スクランブル・カーマガジン」の愛読者であったワイキキにとって、ペニーのラインナップが見事ピタリとツボにはまったのは言うまでもありません。




ペニー擁するポリトーイ社とポリスティルの関係については、ある意味、小スケールミニカーの世界におけるFAQだと思いますので、ここで一度整理しておきましょう。基本的にはポリトーイ社=ポリスティル社です。

60年代:1/43ミニカー等をリリースしていた伊ポリトーイ社が新たに作った小スケールブランドがペニー。なお、英国の玩具メーカーであるポリトーイ社とはまったく無関係。

70年代:70年、英ポリトーイ社にからむ商標の問題から、伊ポリトーイ社は社名変更し、ポリスティル社に。ミニカーブランドの名も各スケール、ポリスティルに統一。(ペニーは廃止)

80年代:88年、トンカ社と合併し、トンカ=ポリスティル社に。

90年代:93年廃業。94年ブラーゴが吸収。(数年前に復活したという話も聞きますが、小スケールミニカーに関する話題は届いてきません。)

ペニーと非常に混同しやすく、やっかいなのは、同時期、同じくイタリーでリリースされていたスピーディの存在です。スケールも1/66と同様、ぱっと見の雰囲気も、あたかも兄弟ブランドであるかのようにかなり似ています。このようにペニーとよく似ているスピーディは伊マーキュリー社のブランドです。



60年代のイタリアン・スポーツをラインナップしていることでマニアの注目を集めているペニーを紹介するに際して、わざわざポルシェをイントロにもってくるあたり、やはりワイキキはひねくれ者かも知れません(笑)。

実は、ここ数年ワイキキは、ペニーの異端児であり、911シリーズの希少車モデルでもある912をずっと探していました。ところが、今年の正月実家に戻ったとき、すでに手に入れていたことを発見し、思わず小躍りしてしまったのでした。
しかし、よくよく考えてみれば……思い入れのあるような、ないような、そんなエピソードですね。



では、ペニーの神髄たる60年代のイタリアン・スポーツを中心に、ワイキキが所有している各モデルを紹介しましょう。

精緻で味のあるイタリアン+αをどうぞ……。

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上記内容は、すべてワイキキの記憶にもとづくものであり、
事実誤認、歪曲、欠落等がありましてもご容赦ください。
あるいは、すべて創作かも知れません。