第4回  正解

アルパインは英ハスキーの逸品、
JL版はサンビーム・タイガーなのでした。



今回ハスキー(Husky)のサンビーム・アルパインを手に入れてみて、それが微妙にJohnny Lightning 007シリーズのアルパイン(←自称)とは異なっていることに気づきました。調べてみると、59年〜68年にかけて英国で製造されたアルパインには、シリーズ1〜5のバリエーションがあるようです。ひょっとしてハスキー版とJL版とではモデル化したシリーズが異なり、両方とも希少車に当たるのでは、と期待が持てました。

JLは「007 Dr.NO」の劇中車のモデルをアルパイン・シリーズ4としています。ですがこれは誤りで、映画で実際に使われたものはシリーズ2なのだそうです。
ところでアルパインの場合、シリーズごとに外見的な違いはほとんどありません。そして、実車の画像と比較してみると、JLのモデルに発見したとある特徴(後述)は、シリーズ4はおろか、どのシリーズにもまったく見られなかったのです。

これは一体何を意味しているのか? JL版の出来がムチャクチャ甘いのか? アルパインといっておきながら、実は別の車種なのか?

正解は後者でした。
右の画像を見て下さい。JLは、ハスキー版に比べ、テールフィンがかなり控えめになっていますね。これはアルパインの派生モデル、サンビーム・タイガーの特徴なのです。
実際JLは、同じ金型のモデルを使ったBritish Invasionシリーズのサンビームをタイガーと明記しています。つまり、そもそもJLはサンビーム・タイガーをモデル化することに決め、それを007シリーズに流用していたのです。この件でJLが世界中の007ヲタクから非難されているのも無理もない話です。(ちなみにJLの「Dr.NO」劇中車1/43版はちゃんとアルパインになっています。)



サンビームのトップモデルであるタイガーは、特異な生い立ちを持ったハイパフォーマンスカーとして知られています。
その誕生に関わっている一人のビッグネーム……キャロル・シェルビー。

64年、サンビームがアルパインをベースにしたホットモデルの開発を計画した時、プロデューサーとして招聘されたのがキャロル・シェルビーでした。
キャロル・シェルビーは62年にACエースをACコブラ(後にシェルビー・コブラ)にと変身させたのとまったく同じ手法でアルパインをモディファイしました。それまで1500cc程度、100馬力にも満たないエンジンしか搭載されていなかったアルパインに、大排気量、大馬力のフォード289ユニットを積み込みました。
こうして生まれたのが英米混血、いわゆるアングロアメリカンのタイガーだったのです。

毒蛇とは違ってタイガーには迫力ある外見は与えられませんでした。後部以外ほとんどオリジナルのアルパインどおりで、むしろテールフィンが大きく突っ立っている分、アルパインのほうがアグレッシブなイメージすら受けます。

同じアングロアメリカンのコブラが米国車という印象が強いのに対し、サンビーム・タイガーは英国車以外の何者でもありません。
面白いことに、巨大な牙をかくし持ったアングロアメリカンなのにもかかわらず、英国車テイストをそのまま残しているのがタイガー、毒蛇プロデュースの猛虎よりもアグレッシブな外見をしているのがアルパインというわけです。


ハスキーについて

ハスキーは、コーギーをリリースしていた玩具会社の小スケールブランドで、コーギージュニアの前身に当たります。マッチボックスにたとえると、コーギージュニアがスーパーファスト、ハスキーはレギュラーシリーズに該当するわけです。

後のコーギージュニアが比較的オモチャっぽい味付けがなされていたのに対し、ハスキーでは実車の再現性が重視されていたようです。とはいえ、スケールが統一されていないのは困りもので、2代目フォード・サンダーバードとサンビーム・アルパインがほとんど同じサイズに見えるのはいただけません。

当時としては珍しく、プラパーツが多用されている車種もあり(アルパインも、シャーシーやバンパーがプラ製です)、年代物にしてはずいぶんと軽量な印象を受けます。プラ製ミニカーというのは50〜60年代におけるひとつの流行ではあったのですが、ダイキャストとプラのハイブリッドはけっして主流派ではありませんでした。



さすがにハスキーほど古いブランドともなると新品にはお目にかかったことがありません。ワイキキのコレクションにあるハスキーは、すべて専門店で中古を購入したものです。
コーギージュニアともなると、また個人的思い出があるのですが、それはまた別の機会にということで……。



では、若干ながら、60年代の英国犬ワールドへ……


画像はこちらから




上記内容は、すべてワイキキの記憶にもとづくものであり、
事実誤認、歪曲、欠落等がありましてもご容赦ください。
あるいは、すべて創作かも知れません。