第5回  正解
スペインのギスバルでした。


■アルピーヌA110の小スケールモデルは、今のところ3つのブランドからリリースされています。香港(返還前)のプレイアート、中国のサマー、そして今回ご紹介するスペインのギスバルです。このうちサマー版はサマー流スタイル(→マーサ流ライフスタイルと似ている)とでも言うべきチープなもので、それなりのA110モデルを入手しようとしたら、プレイアートかギスバルを探すしかありません。

■アルピーヌA110と言えば、ラリーフィールドを席巻したフレンチブルーのイメージがなによりも強いと思いますが、こうしたラリー仕様はギスバルにしかありません。
正確には、ただシールを貼っただけのお手軽な“ラリー仕様風”であり、メタリックがかった車体色も残念なところですが、RALLY MONTECARLOのゼッケンをつけただけで、吹雪を突き破って視界に飛び込んでくるフレンチブルーの姿を思い起こさせるから不思議です。

■プレイアート版は今のところ、緑メタや赤メタなどを確認しています。一体何度ワイキキは、プレイアートのA110をフレンチブルーに塗り替えようと思ったことか。ギスバル版が手元にある今、思いとどまって正解でした。
ただ、ギスバル版よりわずかにコンパクトなプレイアート版のほうが、ライトウェイトスポーツである実車の雰囲気をよりつかんでいると思います。

■ちなみにA110の後継車であるA310はラリー仕様とレーシング仕様がトミカ、ポリスカーがマジョレット、ノーマルがサマーから出ています。面白いことにA310は、サマーはあれなんで(笑)、まともなノーマル仕様のモデルが出ていないわけです。ですから、たとえば「エヴァ」の誰かさん仕様がほしいとしたら、マジョレット版のサイレンランプを引っこ抜いてパテ埋めすることになります。トミカのは、たとえ補助ランプやウィングをとったとしてもオーバーフェンダーが張りすぎていて、「エヴァ」ブームの時も便乗しそこなった感があります。


ギスバルについて


■スペインのギスバル(GUISVAL)社は1962年に創業しています。スタート時点からミニカーをつくっていたのかは不明ですが、60年代から現在まで一貫してギスバル・ブランドの小スケールモデルをリリースしており、スペインを代表する小スケールブランドと言っていいでしょう。
ちなみに60年代以前に誕生したミニカーブランドで、いまだに自国で生産しているのはギスバルだけとも言われています。

■リリースしているモデルは、どちらかと言えばコレクター向けではなくトーイ寄りの感じで、ちょうどフランスのマジョレットに近い位置づけでしょうか。70年代前半はショーカーを多く出していましたが(コーギーJrの影響大?)、それ以降はラリーカーが目立ちます。
ラリー仕様が多いというのは、ギスバルが欧州向けのブランドであることを示唆しています。欧州でのラリー人気は、太平洋沿岸の国々に住む人間には想像もつかないぐらいだと聞きます。またギスバルは、やはり欧州で人気の高いレーシングバイクのモデルでも有名のようです。

■物の本によるとギスバルは、ちょうどスーパーカーブームの真っ直中の1976年、我が国に若干輸入されたとのことで、ワイキキが所有している数台も、その時入ってきたものでしょうか。最近では一昨年(2001年)にごく少量輸入され、いくつかの専門店に並んでいました。


ギスバルのバリエーション研究


■コレクターとしてのワイキキは、ホイールやシャーシーといった細部の違いをほとんど気にするほうではないのですが、ギスバルのバリエーションについてはまったくといってよいほど既存資料がないので、手元にあるモデルからワイキキなりに分類してみました。

■30年前後の歴史をもつギスバルだけに、ホイール形状にしても、シャーシーの素材にしても、それなりの変遷がみられます。

■ホイールの区分(暫定版、年代は推定)
Wheel Type:A
60年代〜70年代前半
Wheel Type:B
70年代前半(ワイヤーホイールっぽい)
Wheel Type:C
70年代後半
Wheel Type:D
80年代前半
Wheel Type:E
80年代後半〜90年代
Wheel Type:F
80年代後半〜90年代
Wheel Type:G
現行ホイール
また、90年前後のF1マシンやグループCカーは、ロードカーとは別のホイール(Wheel Type:R)が使われています。

■シャーシーの区分
Chassis Type:M
ダイキャスト地そのまま。
Chassis Type:C
ダイキャスト製でクロームメッキ。
Chassis Type:Mb
ダイキャスト製。つや消し黒に塗装。
Chassis Type:Mc
ダイキャスト製でつや消し黒以外のカラー。少数派。
Chassis Type:P
プラスチック製。黒が大多数。Wheel Type:E以降。
Chassis Type:Pc
プラスチック製で黒以外のカラー。少数派。

■シャーシーに刻印されたブランドロゴの区分
Logo Type:TM
Guisvalの文字のみ。
Logo Type:F1
現行ロゴ。Guisvalの文字にフォーミュラカーの絵。概ねWheel Type:E以降。

注)以上の分類は、あくまで現在所有しているモデルをもとにした暫定版、あるいは分類のための叩き台であり、今後研究を進めるにつれ適宜変更するものとします。


“死海文書”と、スペインの小スケールブランド

■かねてよりワイキキは、小スケールミニカーの製産国として、欧州ではスペインに着目していました。(もう一つ気になっている国は南米のアルゼンチン)
その理由としては、
○人件費の安い南欧スペインが欧州向けチープトーイの供給地であると思われること。
○イタリアのディーラーによる(?)ミニカー会社一覧に、スペインの小スケールブランドがいくつか示されていたこと。

■後者のリストはWORDの文書としてダウンロードできるイタリア語の資料ですが、世界中のミニカーブランドが、現存するものだけでなく消滅したものも含め国別にリストアップされており、なかなか興味深い内容となっています。ミニカーとは何も関係なさそうなサイトに唐突に置いてあり、意図不明、出所不明なところから、ワイキキはこれを“ミニカー死海文書”と呼んでいます。(プロパティによると、2001年6月にCOCOという人が改訂)

■ギスバルをのぞくスペインの小スケールブランドには、次のものがあります。

ギロイ(GUILOY)
かなりチープな感じ。ワイキキはランチャ037ラリーやフェラーリ288GTOなどを所有。かつて伊勢志摩パルケ・エスパーニャで売っていた。会社は現存しているが、公式サイトには小スケールミニカーの情報はない。
ランチャ037ラリー(ギロイ)

ピレン(PILEN)
我が国でもたまに見かける1/43オートピレンの小スケール版。モデル数は多くなさそうで、スケール性は高い。ワイキキはポルシェ917やフォード・フィエスタなどを所有。おそらく会社自体消滅。
ポルシェ917(ピレン)

ミラ(MIRA)
詳細不明。会社は今もあるらしい。マッチボックスのコピー品らしいランボルギーニ・カウンタック(試作型)や、MBとはまた違うマセラティ・ボラなどがあるが、ワイキキはいずれも未入手。今一番気になるブランド。
ルノー11ラリー(ミラ)

■実物またはモデル画像を見たことがあるブランドは以上ですが、スペインにはこのほかにも、チープ系が幾つかあるのではないかとにらんでいます。未知のスペイン製小スケールを発掘された方がいらしたら、是非ともご教示下さい。




■では、英国製でもドイツ製でもイタリー製でもない、もう一つの欧州テイスト、南欧はスペイン風小スケールの世界へ……


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上記内容は、すべてワイキキの記憶にもとづくものであり、
事実誤認、歪曲、欠落等がありましてもご容赦ください。
あるいは、すべて創作かも知れません。

なお、本稿は、「小さな自動車博物館」のBBSに投稿したものを、
全面的に書き直したものです。