第6回  正解

AURORA CIGARBOX(米)でした。


つかの間の出会い


あれはたしか80年代半ば、山の手線の北のほうにある専門店でのことです。

憧れのフェラーリ250GTO。小スケールモデルが存在することがわかっただけでも驚きなのに、それがショーケースの片隅にポツンとある。さりげない陳列、だが、値段は今でも忘れられない8,500円(!)。

悩みに悩みましたねえ。当時、ビンボーな若者の定番、○○○をしていたワイキキにはとても手の届く金額ではありませんでした。なにしろそれだけのお金があれば二十日は飯が食えたのですから。だいたいビンちゃんな○○○が、他のコレクターさん達をさしおいて、これほどのものを手に入れてしまっていいものか。でも、二度と手にはいるかどうかわからないレアなアイテムなのは間違いありません。

一、二週間悩み、覚悟をきめて店に向かったときは……案の定、250GTOはもう消えていました。


探索……そして幻に


ワイキキはその250GTOを、ずっとイタリーのペニー製だと思いこんでいました。店頭では無造作に「フェラーリ、¥8,500」としか示されてなく、すぐ隣にペニーの何か(失念)が並んでいたからです。ペニー物はその頃1,500〜3,000円が相場でしたが、「250GTOだから8,500円もしてもしょうがない」とワイキキは納得していました。

ところが後年ネットをやるようになってから、いくら探し回っても、ペニーにフェラーリ250GTOがあるという資料は見つからないんですよね〜。かすかな記憶をたどれば、ペニーにしては妙に腰高な感じで、シズラー銀とかのスロットカーにも似た雰囲気……。

で、すっかり悩んでしまったわけです。あの8,500円のフェラーリは一体何だったんだろう、と。自分の記憶違い、見間違いだったのか。やはり250GTOを最初にリリースしたのはEDOCAR/MC TOYなのか。

そうこうしているうちにネットで70年代版JLのヴィンテージを発見しました。250GTOのつもりらしいフェラーリ・カスタムというモデルです。でも、どこか違う。あの幻の跳ね馬は、きちんとノーズのエアインテークが表現されていたはず……。


さて、その正体は

答えは最近になって、ようやく見つかりました。ヴィンテージHWなどを扱っているマニアックな海外の通販サイトにあったのです。

幻の跳ね馬、どうやらそれは、米AURORA CIGARBOXが60年代に出した250GTOのようです。

米AURORAといえばスロットカーのメーカーとして有名であり、CIGARBOXシリーズについていろいろ調べてみると、スロットカーの金型を流用してミニカー化し、葉巻箱を模したケースに詰めたものだということがわかりました。
AURORAには別途SPEEDLINEというシリーズもあり、車種そのものはCIGARBOXといっしょですが、こちらはパッケージが簡略化されているようです。

米AURORAの250GTOは日本のヤフオクにも出品されており、いきなり5,000円ぐらいからスタートしています。8,500円には及ばないとはいえ、いい大人となった今でもさすがに一台5Kはきつく、あきらめるしかありませんでした。


再会

ところが今回、ひょんなことから非常に安くCIGARBOX版250GTOを入手することができました。(経緯は省略)

幻の跳馬は、やはりこのモデルでした。ジャンク品ですが、ワイキキの記憶の中にある姿と一致します。

手にとってみると、ボディがプラ製ではあるもののシャーシー部分がダイキャストなので、推定1/66という見た目の割に、ずっしりとした感じを受けます。

スロットカーを元にしたプラ製なのでジャンクもやむなしでしょうか。一説によると、プラ製のミニカーは破損しやすく、ボディ色の経時劣化も著しいため、何年、何十年とまともな姿でいられるものは非常に少ないとのこと。独シクのプラシリーズに今までお目にかかったことすらないことを考えると、「プラミニカー薄命説」はたしかにうなづけます。

実に惜しいことにこの250GTOは、実車の定番、イタリアン・レッドではありません。ボディがメッキ塗装されているのは、少しでもプラ製の安っぽさをかくすためでしょう。MBのスーパーファストや初期JLのモデルがホットホイールの影響化にあったようにCIGARBOXシリーズもハデハデな銀ピカモデルを出した……とも一瞬考えられますが、実はCIGARBOXシリーズが誕生したのは、ホットホイールの登場よりも前のことなのでした。
(250GTO以外の車種には、メッキ塗装でないモデルも存在するようです。)
※BBSにいらした方々のご指摘によると、アメリカ人はメッキ好きとのこと……?



My Collection第6回として掲載しましたが、今回はここまでにとどめておきます。
実車のGTOに関するテキストはネットでいくらでも見つかりますし、これ以上米AURORAについて語るにはちょっとネタ不足です。他のモデルは所有していません。

といいますか……幻の跳ね馬との再会、今しばらく、その感動の余韻にひたっていたいと思います(笑)。




上記内容は、すべてワイキキの記憶にもとづくものであり、
事実誤認、歪曲、欠落等がありましてもご容赦ください。
あるいは、すべて創作かも知れません。