第9回  二人のディノ、あるいは誰が彼を殺したのか?



 ヒストリックカーの世界に燦然と輝く、一つの名前。
 ディノ。
 その三文字を口にするとき、我々は、そのあまりにも有名な由来と、その名を冠したモデルのスタイリングを連想し、あたかも、はかなさと繊細さを結晶化させたような何かが、舌の上でゆっくりととけだしていくのを感じます。

 もともとディノという名称は、レース用のV6エンジンにつけられたものであり、その流れをくむV6ユニットを搭載するストラダーレ=ロードゴーイングモデルとして、ディノ206GT、246GTシリーズがつくられました。ディノといえば、そのコンパクトで繊細な、“フェラーリの息子”を思い浮かべる人が圧倒的でしょう。実際、世界中に、ディノという名に魅せられ、信奉する人々が一体どれだけいることか。

 しかし、エンスージアストを自認する人ならだれでも知っているように、ディノという名の車はスモール・フェラーリだけではありません。

 あまたのディノ・フリークからほとんど黙殺されている、もう一つのディノ。246GTシリーズと基本的に同じV6ユニットを積む豪華にして流麗なGTカーでありながら、宝石のようなスモール・フェラーリの輝きにすっかりその存在感をかき消されてしまった……フィアット・ディノクーペ&スパイダー。ある意味悲哀感すら漂う一台です。

 フィアット・ディノといえば、小スケールコレクターならば実車そのものよりMY COLLECTION第8回で紹介したP版のフォルムを思い浮かべるのではないでしょうか。
 ところが、前回あえて記したように、Pのフィアット・ディノクーペは希少車ではありません。画像のモデルは、ディノ・フリークさんのサイトでもなかなか扱ってもらえない知られざる小スケール・ディノであり、とても某ブランド製とは思えない逸品です。

 さて、ワイキキが愛してやまない某ブランドですが、今から20年以上前、そのブランドに絡んでとある事件が我が国で起こりました。当時スーパーカー&ミニカー少年だったワイキキは心に痛烈なダメージをくらって、まさしく絶望の淵に追いやられたのです。

 
では、このモデルのブランドは?
そして某ブランドに絡んだとある事件とは?

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